「ごめんね、あの日。いっぱいひどいこと言ってごめん。ばかでごめん」

そう言うあたしを見て、わざとらしく大きく目を見開く。
まるで、『“ごめん”なんて言葉、知ってたのか』とでも言いたげだ。
ふつうに知ってるっつーの。


「――ほんとだよ。ばかだばかだと思ってたけど、ここまでだとは知らなかった」

む、むっかつく!
なんなのよ、人が珍しく素直になってるっていうのに!

「でも、本当に怒ってなんかなかった。ちょっと悲しかっただけ」

“きらいとか言うし、俺の言うこと信じようともしないし?”


――悲しい。

いっそ“怒る”のほうがましだった。
でも、礼の言うことはもっともだ。
(そして、大地くんの言ってたとおり。予想以上に“きらい”を気にしていたらしい)


もっともだよ。
だけど、でも。

「礼を信用してなかったわけじゃないの。問題はあたしなの。あたしがあたしを信じられなかった」


やっと気づいたんだ。
すべての元凶はあたしだった。

あたしがもっと自分に自信を持てていれば、取り巻きの子になにを聞かされようと無視出来たはずだし、蘭さんにだって反論出来ていたはずだ。

なのに、あたしはいっつも諦めて。
どうせあたしなんか、って卑屈ですぐに不安になる。


こんなどうしようもないあたしだけど。
でも、今度こそ頑張るから。

だから。


「…礼、あたし頑張るから。頑張って誰よりもいい女になるよ。
ココナッツクッキーだって作れるようになるし、髪だって伸ばす。
いちいち周りの人の言葉にぐらついたり、やきもちやかないようにもする。
――だから、もうちょっと待ってよ…」


“もうちょっとだけ、あたしのことすきでいて”