「…何であたしはだめなの?」
知らない間に、あたしの手からグラスは消えて、ウーロン茶のコップが収まっている。
「何でもなにも。未成年は酒飲んじゃだめっていう法律があるんすよ、ちーさん」
「礼が19のときだって飲んでたじゃん」
「そりゃ気のせいだろ」
はぁ?!そんなわけあるか!!
そう言ってやろうと思ったのに、礼は言うだけ言って逃げていった。
『とにかく、飲むなよ』
最後にもう一度、とどめを刺して。
――ガラッ
入口の引き戸は、開く度に音がする。
でも、楽しい会話とおいしい料理。
夢中になっていたあたしは、それに気づかなかった。
「悪い悪い!お待たせ~っ!」
多分今入ってきた先輩が最後。
座敷には、見慣れたいつもの面子が大体揃っていた。
「誰もお前なんか待ってねぇけどな」
「最後だから罰ゲームね!」
遅れてきた先輩に向かって、それぞれ好き勝手なことを言う。
先輩は『ひどっ!』とわざとらしく傷ついたふりをして見せ、より一層場が盛り上がる。
「あれ?それ誰?」
先輩の後ろにいる人影。
“それ”だなんて、なんとまあ失礼な。
「いきなり来ちゃってごめんね~」
申し訳なさそうに手を合わせる“彼女”。
あたしと礼、栞(なぜか大地君も)は絶句。
「文学部の伊吹 蘭です。遠藤君に誘われて…」
遠藤さん、なにしてくれんのよ!!
動揺するあたしと栞の隣で、呆然と蘭さんを見つめる礼と大地君。
『開いた口が塞がらない』だなんて、よく言ったものだわ。
この諺を考えた人を尊敬する。
「なんで蘭が来んの?」
「多分、遠藤のやつが蘭のこと気に入ってんじゃね?蘭の知ってるやつもいるし、追い返せねぇだろ」
全然ひそひそ話になってませんけど。
だだ漏れなんですけど。
そんな風にされたら、気にするなって言うほうが無理でしょ。