恒例の飲み会でいつも会場になる居酒屋『てっちゃん』
おしゃれなのに気取ってなく、料理もお酒も最高なみんなのお気に入りのお店だ。


栞との買い物を終えて『てっちゃん』に来ると、すでに半数以上の人が集まっていた。

なんて珍しい。
誰ひとり時計を持っていないのかと疑うほど、時間にルーズな人達ばかりなのに。

今日の飲み会でスノボ旅行の参加者を募ると言っていたから、そのせいもあるのかもしれない。


店に入ってまず、店主であるてっちゃんこと、哲さんに挨拶をする。

「ちーも栞もいらっしゃい」

優しい声と笑顔で返してくれるてっちゃん。
厨房の奥からは、てっちゃんの奥さん、香織さんの顔も覗く。



座敷席に行くと、すでに飲み始めてる人達もいた。なんて自由。

「ちーも栞も遅かったじゃん~」

「早く座って飲みな~」

「礼も大地もまだだから、飲むなら今のうちだよ〜」

好き勝手なこと口にしてくれちゃって。でもお言葉に甘えて、礼の来ないうちに飲んじゃおう!

『鬼の居ぬ間に洗濯』ならぬ、『礼の居ぬ間にアルコール』

栞は、「ばれたら厄介だから」って相変わらずウーロン茶だったけど。
もったいない!!

それじゃ、遠慮なく!かんぱーい!!



…――しようとしたときだった。

なんというタイミングの悪さ。
もとい、あたしの運の悪さ。

「はいはい、ストップ~。何やってんのかな?」

後ろから見てたのかと思うほど、絶妙なタイミングで登場する鬼、またの名を礼様。
そして、カシスオレンジがあたしの喉を潤そうとした、まさにその瞬間、礼に奪い取られてしまった。

隣で栞は、「だから言ったのに」的な顔をして呆れている。
あたしにお酒を勧めた先輩たちは見て見ぬふり。
(とゆうか、無視して宴会続行)

ちょっとくらい、フォローしてよ!!
けしかけたのみんなでしょ!!