『…っ!』


小さなはずの音は、無情にも壁に反響して大きく響く。

そして、思わず息を飲んだ音も…。


「っ!?そこにいるのは誰だ!」


どうしようっ…。


「…今の話、聞いていたなら生きては帰せんな。さあどうするか…」


クックックッという笑い声と共にヒタ…ヒタ…と足音が少しずつ近づいて来る。

逃げなきゃ…

そう思うのに、妖気に呑まれてしまったのか体がいう事をきかない。

逃げないと食べられちゃうよ…

頭の中で警鐘が鳴り続ける。

その間にも、足音と笑い声はどんどん近くなってくる。

カタカタという体の震えが更に大きくなる。

ふと、ヒタ…と足音が止まった。

いつのまにかうつむいていた顔を震えながら上げる。


『っ!!』