「ほら、かばん」


さっきまで逃げてたくせに、急に優しく笑ってかばんを差し出す。


「あ、ありがと」

「かばんとったヤツに「ありがと」は無いだろ、普通」

「あ…、そうかも」


明はくすくす笑うと、私の頭をぽんぽんっとなでた。


「返すから、泣くな」

「な、泣いてないよ!」

「ウソつけ。すでに涙目になってるくせに」

「………」


い、言い返せない…。

私は、昔から涙腺がゆるいらしい。

…といっても学校で泣いたりはしないし、あえて言うなら明の前でだけ…なのかな?

やっぱり「守られてる」って安心感があるからかもしれない。


「ほら、学校いくぞ」

「うん」


明は、イジワルなくせにどこか優しい。

それに、私が悲しんだり泣いてたりすると、一生懸命に元気を出そうとしてくれる。

それは、私を「守る」義務からかもしれない。

でも、私はそれでも嬉しい。

何度でも、好きだなぁって思ってしまう。

明はきっと、私の事をそんな風に見ていないんだろうけど…。


「早和っ!おはよ!」


二人で歩いていると、後ろから声が聞こえた。