…が、今度は俺が固まった。
「さ…わ?」
俺が見たのは、さっきまで話題にのぼっていた早和の泣き顔。
…といっても、まだ涙目の範囲内だが。
それでもこぼれてしまいそうなくらいギリギリまで溜まっている。
涙目で止まっているから、ここで泣く気はないらしい。
華坂がいて泣いてないって事は、よっぽど重大な事だな。
とりあえず二人にならないと話は聞けそうにない。
…連れ出すか。
「渉。わりぃけど、後頼むな」
「おう。まかせとけ」
渉は今までのやりとりですべて了解したのか、ニヤリと笑って二つ返事でOKした。
俺はそのまま目の前で訳が分からないというような顔をしている早和の右手をつかんで歩き出す。
早和は最初はびっくりしたようだが、そのままおとなしくついて来た。
無言で歩き続けて着いたのは屋上。
空いた方の手で屋上のドアを開ける。
思った通り、誰もいないな。
背後でドアが閉まった音を確認してから早和の方を振り向いた。
「早和」