「なんだなんだ、早和、びっくりしたのか?だからいつも言ってるだろう?早和は可愛いんだって!世界一可愛いと思うぞ、俺は。もちろん明もカッコいいとは思うけどな?ただお兄ちゃんとしては、こう、明のことを言われただけでそんな反応をするなんて、寂しいっていうか…、まだ!まだ早いからな!?俺はまだ認めないぞ!?だいたい………」
お兄ちゃんが兄バカ丸出しで延々しゃべってる。
けど、お兄ちゃんの言葉はすべて私の耳を通り抜けて行くだけだった。
お兄ちゃんは、私が息を呑んだ理由は、突然明のことを出されてびっくりしたからだと思ってる。
だけど。
だけど…、違う。
私が息を呑んだのは、そんな理由じゃない。
どうしよう。
ねぇ、明。
どうしたらいいのかな。
これは…、そう。
例えるならば、嵐の前の静けさ。
言いようのない、焦燥感。
お兄ちゃんたちは、明を指して誠二君が言った『ナイト』は、学校で私を、例えばたまにいる変な先生とかから守ってくれてるって意味でとってる。
だけど、違う。
私には、違うってわかる。
誠二君が言った『ナイト』は、明が、私を陰陽師として守ってくれてるってことを意味してる。
誠二君は知ってる。
明に、──私に、力があることを。
だって、ほんの一瞬、もしかしたら誠二君本人でさえ私が気付いたことに気付いてないのかもしれないけど…、感じた。
間違えるわけがない。
せっかく、解放されたと思っていたのに。
知ってる。
だってこれは、
────夢の中で出会った妖怪と、同じ妖気…。