「早和~…。早和のそんな浴衣姿なんて、お兄ちゃんも見てないぞ~…」

「ぅえっ?そそそ、そうだっけ?」


そうだった…。

夏祭りの日は結希ちゃんが協力してくれて、明とふたりっきりだったんだ。

そう思い当たって、自然と目線が泳ぐ。


「さ~わ~?」

「は、はいっ!?」


こ、声が地を這ってるよ、お兄ちゃん…。

嫌な汗が背中を伝う。


「まさか、明とふた…


──コンコンッ


「旦那様、誠二(せいじ)様をお連れいたしました」


お兄ちゃんが核心を突こうとした瞬間、書斎の扉が鳴って、メイドさんの声がした。

…た、助かった……。

思わずホッと安堵の息をつく。

でも。

セイジ様って、誰だろう?

初めて聞く名前に、首を傾げる。

私がそうしている間に、カチャリと扉が開き、メイドさんが入ってきた。

そして。


「失礼します」


そう言ってメイドさんの後に続いて入ってきたのは…


「あっ!」

「ん?……あ、夏祭りの!!」