皆さんが一斉に同じ角度で頭を下げる。

え、ちょっと待ってください。

頭パンクしそう…。

ついこの間まで一般庶民だった私には、この光景はきつい。

だってこんなの、小説とかドラマの中だけだと思ってたよ…。

自分が出迎える方ならまだしも、こんな風に特別扱いされたことなんて今まで一度もない。


「皆さん、いつもありがとうございます」


お兄ちゃんがそう言ってにこりと笑いながら会釈をして歩き出したから、私もとりあえず曖昧な笑みを浮かべながら会釈をした。

そのままお兄ちゃんの後についていく。

ずらっと並んでいるたくさんの執事さんやメイドさんに私の行動を見定められているような気がして、緊張する。

…実際はそんなことないだろうってわかってるけど、でもそんな風に感じてしまう。

か、帰りたいよう…。

なんだか無性に、明にそばにいて欲しくなった。









内心びくびくしながら執事さん、メイドさんの列の間を抜けると、ここまで広くしなくてもいいんじゃないか、と思うような廊下がひたすら続いていた。

このお屋敷まで案内してくれたメイドさんとは別のメイドさんがお屋敷内を案内してくれるらしく、少し緊張した面持ちで私達にぺこりと頭を下げると、先に立って歩き始める。

しばらくメイドさんのあとに続いて歩いたところで、ようやくお屋敷内の調度品を眺める余裕が出来た。

キョロキョロとあたりを見ながら前のふたりについていく。


「…すっごい…」


このお屋敷の中は、ほとんどがアンティーク調のもので飾られていた。

壁にかけてある絵も、繊細なタッチで描かれたものから、激しく荒いタッチで描かれたものまでさまざま。

でもそれらのすべてがとても美しくて、惹きつけられるような魅力がある。

おじいちゃんのお屋敷は、そこら辺の美術館に負けていないほどに素敵な作品がたくさんあった。

ひとつひとつの作品の前で立ち止まって、ゆっくり眺めていたい。

…けど、さすがに今はぐれたら迷って家に帰れなくなりそうな気がするから我慢ガマンっ!!