世の中には知らなくていい事もあるはずだよ。

うん。調べるなんてバカな真似はやめよう。

そう言い聞かせて、なんとか自分を納得させる。

そして、隣で不思議そうな顔をしているお兄ちゃんに笑顔を向けた。


「なんでもないよ」

「…ふぅん…?」


お兄ちゃんは訳がわからないって顔をしてる。

さすがのお兄ちゃんでも、私がこんな事を考えたなんて予想はできなかったみたい。


「お祖父様、早和が来るのを今か今かと待ってるんだろうなぁ…」

「…そうかな?」

「絶対に」


そう言いきって、お兄ちゃんは私をチラッと見てニヤリと笑った。


「お祖父様、早和のことを溺愛してるからな…。あのパーティーの後から何度もうちに電話をかけてきては、早和のことばっかり訊きたがるんだから」

「え…!?し、知らなかった…」

「この前だって、いつになったら早和を連れて来るんだって言われて…なんか叱られた気分だったよ」


お兄ちゃんが苦笑する。

おじいちゃん、そんなに楽しみにしててくれたんだ…。

ちょっと嬉しい。

つい頬が緩んでしまう。


「…早和、そのネックレス、なんだ?」


ニコニコしている私を微笑みながら眺めていたお兄ちゃんの視線が、私の胸元で止まった。

あ、お兄ちゃん気付いたんだ。

実はここ数日…というか、この前のパーティーの時以外はいつもつけてるモノ。

いつもは服の下に隠れてるからわかんなかったんだろうけど…。


「ん?あぁ…これね?夏祭りの夜店の射的でね、明がとってくれたの」


そう。明とのペアアクセ。

晴明印形のネックレス。

まぁ…私が勝手にそう思ってるだけで、ただの星の形のネックレスなんだけど。

…でも、明はこんなもの気にも留めてないんだろうなぁ。

浮かれてるのは、私だけ。

それでも…明の手元にあるもうひとつのネックレスが、お守りになってくれればいいのに…。

どうか、明を守って下さい…。

いつも、このネックレスに触れてはそう願掛けをしてる。