「…本当に私なんかが持ってていいのかな…」
この名刺がすごい物だって聞いて、なんだか不安になってきた。
だって、私はただの女子高生で。
まだ16歳になったばかりで。
ついこの間、お父さんが久城グループの社長だって聞いて驚いたばかりなのに…。
―――久城…というと、あの…。まぁまぁ。お父様によろしくお伝えくださいね―――
「ということは…あれはそういう意味だったのね…」
「ん?」
「…ルカ君のお母様に、『お父様によろしくお伝えくださいね』って言われたの」
「ああ…。向こうは久城財閥を知ってたんだな」
みたいですね。
心の中でそう返して、手元に戻ってきた名刺を眺める。
これがすごい物だってわかったからには、なおさら粗末に扱うなんて出来ない。
しかもプライベートナンバーまで書いてあるんだし…。
本当に、大切にしなきゃ。
もう一度ギュッと両手で包みこんだ。
「それ見たら、裕也さん驚くんじゃねぇの?」
「…そうかも」
外からドアを開けて会場に入ると、光のシャワーが一気に降り注いだみたいだった。
「…なんでだろ。中と外ってだけなのにこんなに雰囲気が違うんだね」
「それは、ずっと外にいたかったっていう風にとっていいのかな?早和ちゃん」
「違います!外は静かなのに、会場の中はキラキラしてて、なんか雰囲気が違うって意味なの!…明、今ワザと言ったでしょ」
むーっと睨みつけると、素知らぬ顔であさっての方向を見る明。
まったく。