あれから俺がずっと早和を守ってきた。

妖怪から、そしてそれ以外からも。

早和のあの容姿でモテない訳もなく、ずっと変な虫がつかないようにそばにいた。

ただ、早和は自分のかわいさに気がついていない。

それが俺の苦労を増やしているんだが…。


「おっなんだなんだ。早和ちゃんの事を考えているのか?」


親父が嬉しそうに、いや楽しそうに言う。


「楽しんでんじゃねーよ」

「いや、つい…な。お前見てるとおもしろくて」

「性格悪いな。親父」

(あなたにもその血は流れていますよ?明くん?)


親父はおもしろいものを見る目で俺を見る。


「だってなぁ?お前は気づいてないかもしれんが、早和ちゃんの事を考えている時の明はそれはもう穏やかな顔をしているんだぞ?それでよく10年もお前の気持ちがバレずに過ごしてこれたな?」


…余計なお世話だよ。


「どうせ言ったって早和が困るだけだろ。ほぼ兄妹のように育ったんだし」


そう言うと、親父が急に真面目な顔になった。


「あきらめるなよ。あきらめなければ、どんな事だっていつかは良い方向に転がるんだ。お前はそうやってどんなに難しい術でも習得してきただろう?」

「………」


この親父の言葉がのちに俺の力になるなんて、この時の俺には考えもつかなかった。