「おう。まかせとけ」
にこっと笑って二つ返事をする渉くん。
なに…どういうこと?
訳が分からなくて混乱しかかった瞬間、私はぐいっと右手をひかれて、気がついたら明につれられて廊下を歩いていた。
明は私の手を引いたまま無言で歩を進める。
上を向いていたら泣いちゃいそうで、自然とまたうつむいてしまった。
おかげでどこを歩いているのかがまったくわからない。
どこに連れて行かれちゃうんだろう…。
でも、明だから全く不安は無かった。
ガチャ…
ドアを開ける音がして顔を上げると、風が頬をなでていった。
屋上…?
バタン…と後ろで屋上のドアが閉まる。
そこでやっと明が歩みを止めてこっちを振り返った。
「早和」
5月の気持ち良い風が私達の間を通り抜けていく。
明を見上げると、私が大好きな優しい笑顔。
そこで私の我慢の糸はプツンと切れた。