「そうだね。だって、久城財閥って言ったら日本を代表する会社のひとつよ?それだけのものを動かせる力がある人じゃないと務まらないもの」

「…そっか」

「だけどね?早和」


結希ちゃんがイタズラっ子のように笑う。


「早和のお祖父様…誠一郎様はね、厳しそうに見えるけど、きっと早和にはそうじゃないわよ?絶対にデレデレしちゃうんだから」

「…えぇ?」


それ、本当?

と思わず訊きたくなってしまう。

だって、あのおじいちゃんが…だよ?

マナーがなっとらん!とか言って怒られそうだなって実はビクビクしてたのに…。


「あ、誠一郎様がこっちにいらっしゃるわ。ほら、早和いってらっしゃい」


結希ちゃんが言うと同時にポンッと私の背中を押した。


「きゃ…っ!」


慣れない靴を履いている私は、そのままバランスを崩し、床に転んでしまった。


「痛い…」


すぐに立ち上がれなくてぺたりと床に座り込んでしまう。


「もう…結希ちゃんってばいつも強引なんだから…」


ぶつぶつ文句を言っていると…


「大丈夫か?」


真上から心配そうな声が聞こえた。

びっくりして顔をあげると、そこにいたのは…


「…おじい…ちゃん…?」


さっきまで挨拶をしていた、まぎれもない私のおじいちゃんだった。

突然の事に驚いてポカンとしている私を見つめていたおじいちゃんは、ふいに相好を崩して私の頭を撫でた。


「ああ…可愛い可愛い孫娘に『おじいちゃん』と呼ばれる日が来るなんて…!何年この瞬間を待ったことか…!早和、おじいちゃんだぞ!これからはたくさん遊びに来なさい。今まで会えなかった時間分を取り戻そう!」

「…えっと…」


相変わらずどうしていいかわからない私の頭を撫で続けながら、おじいちゃんはすごく感激した様子でしゃべる。