暗く深い空間の中で小さく押し殺したように笑う声がする。
その声は徐々に大きくなり、耳に刺さるように響き、反響する。
「もうすぐだ。もうすぐ、あの男に復讐することができる…。そして、あの娘を手に入れてもっと強くなるのだ…」
バサリ、と大きな羽の音がして何かが膝をつく。
「主様、私が宴の準備をしてまいりましょう。必ずや、あの娘を主様の手に納めて差し上げます」
「ならば、行くがよい。行ってあの男に絶望を与えるのだ」
「はっ」
短く応じた声にかぶさるようにしてまた羽音が響き、次の瞬間にはその姿は消えていた。
「もうすぐ、あの男の絶望する顔が見られる…」
空間に押し殺したような笑い声が響く。
そして、その余韻を残したまま黒い影は掻き消えた――――。