コイの母は勉強しろと口うるさく、毎日のように言っていた。

丁度1年の冬休みが終わるころに、母が家庭教師を家に連れて来た。


見た目は好青年、といったところか。

ただどうしても作り笑顔が気になって仕方なかった。



母がいうには、近所の電柱に貼ってあった『家庭教師します』という張り紙を見て

県内の、わりと頭の良い大学に通っているというその男を連れて来たのだという。


張り紙という時点でわりと怪しいと思うのが普通だが、

電話をして直接会って、その笑顔(作り笑顔)にキュンとして

母は雇う事を決めたそうだ。


単純な母だ。



だが、実際に教えるのがうまいようで、コイは冬休み明けのテストでクラスでも上位の点数を取った。


そのおかげで今でもまだその家庭教師─小池ユウ─を雇っている。