「コイ~先生来たわよ~」

階下で叫んだ声は母。


先生というのは、勉強しろとうるさい母のススメで始めた家庭教師というやつだ。

先生と言っても、コイと年はそんなに変わらない大学生だという。


「こんばんは、コイちゃん」

「・・・こんばんは」


コイはこの家庭教師、小池ユウが苦手だった。

常によくわからないキラキラしたオーラを放っているからだ。

そして何故か、ニコニコと作り笑顔満開だからだ。


「ごめんね、なかなか来れなくて」


困ったような作り笑顔をする小池ユウに対して、コイはどうしても一線ひいてしまう。

コイは気付いているが、コイの母はこの作り笑顔に完璧に騙されているから余計だ。




小池ユウがなかなか来られなかった理由は、カテイノジジョウというやつだった。

詳しくは聞いていない・・・というのも、特に興味もなかったので聞いていない


「先生、お茶置いておきますね」


戸が開いていた部屋に、母がニコニコしてテーブルの上にお茶を置いて出て行った。
ありがとうございます、と作り笑顔で礼を言う小池ユウを横目でちらりと見て机に向かった。



こうしてまた苦痛な時間を過ごさなければならないのかと、

コイは早く時間が経つのをただ待つだけだった。