それでも――――

それでも彼は走った。




ライバル達よりも速く走れなくても。

形のある結果は残せなくても。

彼の走りが他の誰もが知らないものでも。





彼の持てる力を全部脚に使って
彼は全力で走った。



それを彼は覚えているだろう。

そして私も忘れない。



そう思うと、
あの時の太陽の日差しも
鳥との追いかけっこも
風を切る彼の走りも
私の小さな願いも


すべてが意味のある大切な…
大切な時間だった。








きっと私の記憶の中で
彼は走り続ける。



いつまでも


いつまでも。










おわり*