「速くなった?」


体全体で荒い息をする彼は私に問う。


「速くなった」



彼の額から輪郭に沿って顎から落ちる汗を目で追いながら言った。

渇いた地面にポツポツと小さなシミを残す。


汗は彼が残せる唯一の努力の証だと思った。

それが地面に吸い込まれていくのは、何だか勿体なく感じた。





彼は笑った。



「やった」