どれほど走ったのだろう。
この長い夢はいつになったら終わるのだろう。

沢山、走って疲れきった私は階段に座りこんだ。
肌に伝わる冷たい感覚。
肺が苦しいと叫ぶ。
…これは夢じゃない。

目から溢れた涙を拭い膝に顔を埋めると後ろから声がした。
私は急いで顔をあげ振り返ると逞が居た。
あんなに走ったのにもう追いつかれるなんて。

初めて見た逞の怖い顔。

徐々に迫ってくる逞。
私は立ち上がり後ずさりしようとしたけどここは階段。
落ちたら一たまりもない。

とうとう腕を捕まれてしまった。

「やだっ」

どんなに抵抗しても男の子の力に勝てない。

逞は私を抑えつけてシャツのボタンを外していく。

「逞っ…、ヤメテ」
その言葉を聞いた逞は見たこともない冷たい笑顔をした。

「ヤメテ?こういうことしてほしかったんじゃないの?」

そう言いながらどんどんボタンを外していく。

こんなの逞じゃない。
私の知ってる逞じゃない。

目を閉じると一粒、涙が落ちた。

「…おい」

上から私の大嫌いな人の声が聞こえた。
目を開けるとそこには竹内廉がいた。

…まさか助けに来てくれたとか?

竹内廉は逞を殴り階段に落とし、私の腕を掴んで何も言わず走り去った。

そんな竹内廉の優しさに更に涙が出た。