「おはよ」
葵が去ったと同時に逞から声をかけられた。
挨拶だけなのに私の心臓は飛び跳ねる。
「お、おはよっ」

逞を見ていると昨日の嫌な事なんて忘れられそう。
なんて思っていたのもつかの間、曲がり角から竹内廉が現れた。

私は怖いと言う気持ちは無く一心不乱に竹内廉に走り寄った。

「竹内廉!!リボン返して!!」

そんな私の言葉を聞き高い位置から意地悪な顔をして私を見下す。

「何の事か分かんねえなぁ」

そう言う竹内廉はニヤニヤしてる。

「リボン返して!!」
竹内廉の腕を掴んで念を押そうとした時、私の目の前に逞が立った。

「何の事か分かんないけどリボン返してあげて」

竹内廉の意地悪な口調とはまるで正反対で逞の冷静で淡々とした口調が目の前から聞こえる。

「ああ?またテメェかつまんねぇの」
竹内廉はそう言い、あっさりとリボンを逞に押し付けるように渡した。

「はい、コレ」

逞はくしゃくしゃになった私のリボンを差し出した。

「あ、ありがと…」
戸惑う私の後ろに周りリボンを首に通した。

…顔、近い。
また私の胸がドキドキと高鳴る。

「何かあったら俺に言えって言ったでしょ?」

リボンを綺麗につけてくれた廉は私の前に立ち私に顔を近づけて優しく微笑んだ。

「…うん、ありがと」

どうして逞は、そんなに優しいの?
どうしてそんな期待させるようなことを言うの?

ファーストキスは逞が良かったな。
ふっとそんな考えが頭を過ぎる。
…好きだからキスをする。
葵が言っていた言葉が頭に浮かんだ。