「委員長と副委員長は残ってください。それでは体育委員を終了します。さようなら」
とイジワルな先生の言葉。

私は下を向きながら荷物を取りに行くと、
「俺、廊下で待ってるから」
と逞が言った。

へ!?と逞を見るとニコッと私に微笑んだ。
待ってるから、って一緒に帰るってこと!?
そう思うと自然と笑みが零れた。
廊下に向かう逞の背中を笑顔で見つめた。

だけど、私は忘れていた。
「おい、何、ニヤけてんだよ」
竹内廉がいたことを…。
私は竹内廉を睨みながら、
「別に、ニヤけてないしっ!!ってか私を副委員長にさせるとか何考えてんの!?」と怒鳴る。
だけど、竹内廉は怯むどころか不気味に笑った。
「さっきも言っただろ?俺はお前が気にいったんだよ」
気にいった、
意味分かんない!!
何処が気にいったね!?ただ、からかってるだけでしょ、絶対!!
からかうだけなら竹内廉の事が好きな葵でもいいじゃん!!

私が心の中で竹内廉の不満をぶちまけていると、
「委員長、副委員長、こちらに座ってください」
と先生に言われ席に着く。
隣は竹内廉…、最悪。
私は竹内廉と少し距離を置いて座った。
「5月には体育祭っす。体育委員が中心として進めていくので」

長く感じた話は終わり私はいち早く教室を出た。

廊下には壁に寄り掛かって逞が立っていた。
「ごめん!お待たせ」
そう言いながら駆け足で逞の元へと行く。
「おつかれ。帰ろっか」
逞の優しい笑顔。
本当に一緒に帰れるんだ…。

私は逞の横を着いて歩いた。

逞の横顔…。
また、私の胸がトクンッと弾んだ。
恋って言うのは気づいたらその人を好きになっている、と言う奈美の言葉と、
彼の事で頭がいっぱいになって一緒にいるだけで幸せ、と言う葵の言葉。
…なんだか今なら分かる気がする。
それは私が今、恋してるから?

「ってか何?あの男」
と逞が口を開いた。
逞の顔を見れば、いつも優しい逞の表情はなく、眉間にシワを寄せて明らかに怪訝な顔をしている逞が居た。

あの男…?
頭の中を回転させれば、竹内廉の顔が浮かぶ。
きっと竹内廉の事を言っているのだろう。