「仲谷舞、だよ」
と逞が竹内廉のことを冷たい目で見て言った。
私は思わず逞を見る。
私のために眉間を寄せて竹内廉をがんつけていた。

「んだよ、テメーは」
逞の目つきにムカついたのか竹内廉は逞を睨みつける。
「俺の名前は斎藤逞。って言うか女の子に対してそう言うあだ名、失礼だと思う」
逞が冷静に竹内廉に言う。
竹内廉はチッと軽く舌打ちを打ち何も言わずに席に着いた。
「あ、ありがとう…」
私は逞をチラッと見たけど恥ずかしくなってすぐに目を逸らしてしまった。
まさか、逞が助けてくれるとは…。

「大丈夫?俺、あうゆうの嫌いなんだ。何かあったら俺に言ってよ」
再び逞の顔を見る。逞は優しくて暖かい笑顔で私を見る。
その魅力的な笑顔は私の心を掴んで離さない。
…もう、目は背けられない。

「…うん」
私は、そう言い自分の手元を見た。
顔が赤くなっている気がしたから。

優しいな…。
また、私の心臓が激しく脈打つ。

「…逞って彼女いる??」
思わず口から零れた恥ずかしい一言。
撤回したいけど逞の耳にはきっと届いているであろう。

「いないよ」
えっ。
いないんだ…。
良かった、と思い胸を撫で下ろした。

「じゃあ、好きな人は??」
「いないよ。って言うか恋とかよく分かんないし…」
と言う逞の言葉に何だか安心した。
逞も私と一緒なんだ、そう思ったから。
「だよね。私もよく分かんない」
何て話していると担当の先生が教室に入ってきた。
「遅れてすいません。これ、回してください」
入って早々、先生は手に持っていた手紙を皆に回した。

「まずは委員長を決めたいと思います。誰かやりたい人」
と先生が皆に聞くと三年生が手を挙げた。
偉いな。
委員長とか面倒だししたくない。

「じゃあ、田中君で決まりね。次、副委員長」
「はい!俺やる!仲谷さんと!!」
と前から元気な声が聞こえる。
偉い。
って、え!?私!?
声をした方向を見ると竹内廉が手を挙げていた。
「じゃあ決まりね」何でそうなるの?
どうして竹内廉は私に関わるの!?
私は竹内廉を思い切り睨みつけた。

「じゃあ、早速前に来て下さい」
そんな!!
そしたら逞の前に座れないじゃん。
私は落ち込みながら前に立った。