あの男誰だよ。


俺のこと好きとか言って諦めないとか言って結局その程度かよ。




・・・って俺なに考えてんだよ。






あの時は認めたくなかったんだ。



咲季のこと好きだってこと。
















次の日の放課後、咲季によばれた。





「なに」




「あの、なんか優斗先輩怒ってます?」





咲季がそう言って俺の顔を覗きこむ。




「別に」



俺は合った目をそらしてそう言った。





「あたし、ほんとに

優斗先輩のこと好きです」





うそつけ。

じゃぁなんで昨日来なかったんだよ。

じゃぁなんで昨日他の男と楽しそうに話してたんだよ。






「・・・」




「でもこれが最後の告白にします」





「え・・・」






俺は少しだけ顔を上げた。






顔を上げると涙をためた咲季が立っていた。


今にもこぼれそうな涙を必死におさえてるように見えた。










「あたし優斗先輩が好き・・・です」




「・・・」




いつもより暗い声で咲季が言った。






「今までしつこくてすいませんでした」








「なんだよ・・・それ」




「え・・・?」




さんざん好きだって言っといてもう諦めます?なんだよそれ。






「あの、優斗先輩?」




気づけば俺は咲季を抱きしめていた。





「好きだ」




「へ・・・?」




「俺のこと好きじゃない?」




俺がそう聞くと咲季は頭を横に振る。








「好き。・・・大好きです」






















「優斗ーっ!」




「お前声でけーよ」





放課後、俺が玄関に行くと咲季が俺の名前を呼ぶ。

でかい声で。




付き合うようになってから咲季は玄関で俺のことを待っている。


そして俺の姿が見えるといつもでかい声で呼ぶ。





「ねぇ今日うち来ない?」




玄関を出ると腕を絡めながらそう言ってきた。





「うーん。どうしよっかな」




「えぇーなにそれっ。ねぇ来て?」





上目遣いで俺を見てくる咲季。




やべ・・・。




俺はとっさに目をそらした。





「・・・お前そういうの、やめろ」




「え?」




「だからっ、その目とか・・・」




多分こいつは無意識。厄介すぎる。



こいつは無意識なのに俺はそれにドキドキしてるなんてダセェ。





「ねぇーってば!来るでしょ?」




咲季は組んでいる腕を乱暴に振りながら俺の顔を覗きこむ。




「はいはい、行きますよ。

その代わり襲われても知らねーよ?」





「・・・ばか」





咲季は顔を赤くしながら下を向いて言った。




「なに赤くなってんの」




「な、なってないし!」





咲季はこういうことを言うといつも顔を赤くする。



それが可愛くてついからかってしまう。



けっこう俺ってSだなって最近気づいた。













「なんか飲むー?」




部屋に入ると咲季が聞いてきた。




「いや、大丈夫」




咲季はそう?と言って俺のジャケットをハンガーにかける。




「あ、これね優斗用のハンガーなの」




咲季はジャケットをかけたハンガーを俺に見せた。




「へー」




「うわ、流されたぁー」




「うそうそ。ありがとな」




俺がそう言うと咲季は満足そうな顔をして俺の隣に座った。












なんだ、この沈黙。


咲季はめずらしくなにもしゃべらない。





なんて考えてたら咲季が急に俺の肩に頭をのっけてきた。






「咲季?」




「・・・ちょっとだけ。

このままでいさせて」






おいおい。
やべーぞ、俺。


二人っきりの部屋でこんなことされたら・・・。







ちゅ。




俺は咲季に触れるか触れないかぐらいのキスをした。






咲季はびっくりした顔をして俺を見る。





「そんな顔で見んなよ。

お前が悪いんだぞ」




俺は咲季から目をそらして反対側を向いた。


























「ねぇ、もういっかい・・・して?」




「え?」




咲季がうるうるした目で俺を見る。





だからその目やめろよ・・・。




「なにしてほしいの?」




俺がそう聞くと咲季ははずかしそうに下を向く。




「・・・わかってるくせに」





「言ってくれないとわかんない」





あんな目するお前が悪いんだよ・・・。





「言わないとしてやんねーよ?」





ほら、言ってみろよ。


早く言えよ。




「・・・キス」





やべー。もう無理。
もう知らねぇ・・・。






俺の中でなにかが切れた。
























俺は咲季のあごを持ち上げてキスをした。



「ん・・・」




咲季の口から漏れる声が可愛くて、その声がもっと聞きたくて俺は激しくした。





「ゆう・・・と、っん」




「咲季・・・。俺、もう限界」





苦しかったのか、咲季の顔を見ると少し息が切れていて目がトローンとしていた。




「優斗・・・?」





「咲季のこと・・・抱きたい」






俺がそう言うと咲季は俺に抱きついてきた。





「・・・優しくして、ね」

















その日初めて咲季とひとつになった。













「なぁ、そんな怒るなって」




「怒ってないし!」




「どこがだよ」







咲季が不機嫌。




俺が告白された女が言った言葉にむかついている。





[あんな子どもっぽい子のどこが好きなの!?

優斗に釣り合ってないよ!!]




まぁ・・・確かにひどい。





俺と咲季と帰ろうと学校の玄関を出ると同じクラスの女に体育館裏に呼び出された。



咲季は玄関で待ってた。



でも、俺がその女の告白を断ると女がさっきのセリフを叫びだした。
案の定、咲季には聞こえていて・・・。





「なんで優斗も言い返さないの!?」




だって、



「だってあいつが言ってること

正しいしね・・・」





「・・・もういいっ」





咲季はそう言って歩くスピードを速めてスタスタ歩く。