クリスマスイブの前日。

僕は少し気分が高揚しているのもあって、夜中に散歩に出かけた。

明日の仕事が終わった後、彼女にケーキを渡すときのことを想像しながら。

しかし何だか夜中だというのに、少し街の中が騒がしい気がした。

ガラスの割れるような音や、人の声が聞こえる。なんだ。何かが起きている。

声のする方へいくと、数人の人だかりができていた。

「何かあったんですか?」

「いや、どうやら何軒かの家に泥棒が入っているらしい。けれどどうも財布のありそうな寝室ではなく、キッチンが狙われているらしいんだ」


「キッチンが狙われている?」


犯人の目的はよくわからないが、途端に嫌な胸騒ぎがした。

キッチンが狙われているのであれば、一般の家よりもレストランや、そう、ケーキ屋も襲われるのではないか。

そう思い、急いで店へと走った。