奈津美は二年前母を亡くし途方にくれていた。そんなときに瑞樹の両親が同居しようという話を持ちかけたのだ。

その話は奈津美が一回だけ行方不明になった後に出来た話だ。
行方不明になったとき奈津美は死のうとしていた。両親のところへ行こうとして。そのときの瞳は孤独で満たされていた。

瑞樹は今でも自分が遅れていたらと思うとぞっとする。

だからこうして楽しそうにじゃれ合っている姿を見るとやっぱり微笑ましいなと思うのである。

瑞樹は正直、泣きそうになりながらも奈津美を急かした。

「早くしねーと置いてくぞ！」
「わーっ！まってえぇ！！」
「ほらちゃんと髪の毛とかして！」

奈津美は幸せだなと思った。そう思うとなんだか泣きそうになってしまった。

「ほらぁ、はやくはやくぅ♪」
「はぁーい！」

奈津美は幸せで胸をいっぱいにしながら元気よく返事をした。