お母さんのご飯は本当に美味しくて。


あたしはやっぱりまだまだお母さんに敵わないなって
実感させられた。


帰り際に

「仲直り、しなさいよね」

お母さんは小さな声でそう言ってくれて。


お母さんの偉大さを改めて知った気がした。


なんでも知ってるんだね、あたしの気持ちも。どうしたいかも。


少し前を歩く翔さんの手をそっと握ってみる。


無視されたり、振り払われたりしたらどうしようって
不安でたまらなかったけれど


翔さんはただ黙ってあたしの手を握り返してくれた。


いつものように


優しく

強く。


そして


「君は..」

翔さんが口を開いたその時だった。



「柚子?」