その言葉が嬉しくて
くすぐったくて
自然と笑顔が溢れる。
「来秋には前にいたマンションに戻れるはずだ」
「うん」
「君と俺が過ごした思い出の場所に」
「ここも十分思い出が詰まってるよ?」
「そうだな」
クスッと笑うと体を向きなおされて
翔さんと向き合う。
「泡ついちゃうよ」
「構わないよ」
ぐっと距離が近くなる。
「たまに帰って来るから、そう心配そうな顔するな」
「心配そうな顔なんてしてないもん」
あたしは大丈夫。
翔さんの言葉があるから。
いつでも思い出せるから。
この温もりも
重なる唇も―――
「柚子、愛してるよ」
囁いてくれる、甘い言葉も―――