「榊、この企画書だが」

「はい、そちらは...」


年が明けた。

毎日あわただしく過ぎていく毎日に頭痛を伴いながらも必死に生きている。


「社長、少しは休んだ方が宜しいのでは?」

見かねた榊が心配そうな顔で俺を見つめてくる。


「いや、大丈夫だ」


こうしていないと嫌でも思い出してしまうから。


「行かないで」


ふと一人の少女を思いだした。

ふと、という表現はもしかしたら間違っているかもしれない。

常に考えてる事だから。


柚子、ごめん。

何度夢の中で謝った事だろう。

涙をいっぱいにためた顔も。

鳴き声すらも。

すべてをまだ自分のものにしてしまいたい、

そう思うのは俺のわがままなんだろうか。

俺自身がほかのものになろうとしているのに。

それでも彼女がほかの男と一緒にいるだけでこんなにも怒りがこみ上げてくる。


俺があんなに突き放したのに。

泣き叫ぶ、愛おしい人の顔。

いつだって君の事を笑顔でいっぱいにしてあげたかった。



「本日は午後から三橋との合同記者会見がありますが..」

榊の声に意識を集中し、出来るだけ思い出さないようにしてるのに。


くそ


「分かってる。先方にも伝えてくれ」

「かしこまりました」