「ほら、鼻水ふけ」

「ふかせて..くだ、さい」

「ったくお前は」



すっかり日は落ちて、

周りは真っ暗。

車に戻るとすぐに中村さんがティッシュの箱を差し出した。


「ほら、チーン!」

チーンなんて普段なら絶対に言いそうにないのに

「ふふっ」

おかしくてつい笑ってしまう。

「泣いたり笑ったり、本当に忙しいやつだな」

「だってふが!」

「ほら。ったく」


心から笑えるようになったのは紛れもなく中村さんのおかげだ。

一人で抱え込んで泣くよりも

誰かに甘えてもいい。

それを教えてくれた人。