そう言いたいのに

声が出ない。


言葉が出て来ない。


足も体も震えて

追いかけることも出来ない。


「行こう、柚子」


ただ言われるまま、その場を後にしたあたし達。


エレベータに逃げるように乗り込んだ。



ホテルのロビーまで来たところで

「柚子さん」


聞き覚えのある声が足を止めた。

涙を必死に拭って振り向くとそこにはおじいさまがいて。