本当に大好きだった<完>



{待って。今更だけど妻ってことは龍也は既婚者?それ聞かなきゃ。}

「すいません。妻って…、結婚してるんですか?」

頭がごちゃごちゃの私は

あり得ないほど冷静だった。

「子供もいますけど。ってかあなた何も知らなかったの?」

{何も、って妻子持ちどころか

彼女いたら普通付き合わないよ。}

「知りませんでした。私龍也と縁切ります。」



「車の後ろのベビーカーとか気がつかなかったの?」

{何それ?そんなの無かったよ。

…けど、いつも車が前しか乗れないようになっていたのは

ベビーカーを隠すためか。}

「気付きませんでした。」



「もぉ、今後一切龍也と関わらないでくれる?」

「勿論です。

…それでは失礼します。」

わずか3分位の会話だったと思う。

私は頭が整理出来ないまま学校へ行った。



でも、頭ではわかっていなくても体にでた。

気持ち悪くなってすぐ保健室へ。

微熱がでて早退した。



私はとりあえず、龍也の友達に電話をした。

「もしもし。亜希子です。」

「おぉ。久しぶりじゃん。どぉした?」

「龍也って何者ですか?今日龍也の奥さんから電話かかってきたんですけど。」

「…嘘。」

「ホントです。こんな嘘つきません。龍也は結婚してるんですか?」

「してるよ。

結婚式も呼ばれてないし、相手の子は名前と年しか知らないけど

かなりきつい子らしい。」

「奥さんと子供のこと教えて下さい。」

「名前は麻由で年は亜希子ちゃんとタメ。子供は悠斗だったかな。」

「ぁりがとうございます。」

「龍也は亜希子ちゃんのことホントに好きだったし

亜希子ちゃんのこと、今までの彼女で1番好きだったよ。

でも龍也は最低だな。」

{ホント最低だよ。でも聞きたくなかった。

どうせなら、遊びだったって言ってよ。余計悲しくなるじゃん。}



「色々ありがとうございました。

途中できつい口調になっちゃってすいませんでした。」

「まぁ、龍也より良い男は沢山いるよ。例えば俺とかね(笑)

辛いだろうけど、頑張って。」

「龍也は最低なんで、全然大丈夫です。ありがとうございました。」

「いーえ。じゃあね。また、いつでも連絡してね。」

最後は強がって龍也のことを忘れたように言った。

そして、龍也の友達とも連絡をとることはなくなった。



私の恋はホントに終わった。

最後は龍也にさよならも言わずに…。

龍也に伝えたいことなんて、山ほどあった。

お互いが求め合ってるのに、離れなきゃいけないことが

こんなに辛いことだって思わなかった。

また、愛してるって言って抱きしめて欲しかった。

私が納得いくまで騙し続けて欲しかった。

でも、この時は悲しいとか寂しいとは全然思わなくて

何が起こったかわからない放心状態だった。

現実を受け入れられなくて涙も出なかった。



でも、龍也のことを非難しながらも

私を支えてくれた友達には連絡しなければならなかった。

支えてくれた友達は沢山いた。

その中でも、紅と美紀には直接電話で伝えた。

恋愛よりも、私のことを心配してくれた。

龍也のことが嫌いでもいつも味方でいてくれた。

時には、厳しく怒ってくれた。

私は友達が居なかったら

この恋愛を乗り越えられず、どぉなってたかわからない。



電話では

[忘れられないかもしれないけど、忘れなきゃダメ]

と言われた。

そして、龍也は私と奥さんと子供を裏切った最低な人だと教えてくれた。

私がここまできても、龍也のことをかばっていたから…。