―――屋上。
校舎の中へと続くその出入口の上は、同じ屋上でも2メートル程度の高さがある。
さらにそこに給水タンクがあることによって、日も当たらない死角ができる。いわゆるそこは、俺の絶好のサボりスポットだった。
……全く、授業をサボって寝てしまったせいでこれぜよ。
目覚めた時には下に、1つ上の幼なじみと悩みの種である女の姿。
…――参ったな。
話を、聞くつもりではなかった。
でも、出るに出られないまま、幾分大きな声で交わされる会話が耳に入らない訳もなく、彼女から紡がれる言葉に、ただ自嘲するより他ない。
「知らないよ、あんな奴。」
ガチャン、聞き慣れた大きな音がしたとともに零れた大きなため息。教室に戻る気力もなくしてそのままでいれば、聞き慣れた声が鼓膜を揺らす。
「出てきなよ、渓都。そこにいるんだろ。」
……ああ、気づいてたのか。
「……何じゃ。気づいちょったんですか、結城センパイ。」
嫌みを込めてそう言いながら姿を晒せば、明人は困ったように眉をひそめた。