旭ちゃんはそれを私より先に気づいて、差し伸べられた手をとって。
このままじゃいけないと、そう、私に伝えたかったのだろう。


「だから、雫先輩。この前言ってくれなかった雫先輩の気持ち、聞かせてください。」


私の思考を遮るように、真剣な大谷くんの声が鼓膜を揺らした。

私の、気持ち……
そんなの、決まってる。わかってる。ただ、口に出すのが怖い。
ねえ、旭ちゃん、本当にいいのかな?一度利用して傷付けたはずの私が、大谷くんの傍にいても…
本当に私、自分に素直になっていいの…?


「……私、大谷くんの傍にいていいの?」


ようやく出した声は、思いのほか弱々しかったけれど。その声を聞き逃さなかった大谷くんは、当たり前だとでもいうように、優しく微笑む。