「いい加減、俺を好きになったか?」
部活開始前である、バスケ部の部室。
中心にある机で部活記録をめくっていたあたしに向けられた、まったく脈絡のない問いかけ。
「馬鹿じゃん。んな訳ないし。」
「つれないのう。」
視線を向けることなく言葉を返せば、問いの主である椎名はこれみよがしに大きく息を吐いた。
「……蒼井。このウザいのどうにかして。」
「いや、それはムリだって。」
まぁ、蒼井に期待なんてしてなかったけど。
苦笑を零した蒼井に一瞬だけ視線を向け、すぐにまた記録へと視線を落とした刹那、何かを思い出したように発された蒼井の声で再びあたしの視線は蒼井に向けられた。
「あ。」
「……何。」
「え、あ、おう。そういえばさっき、結城くんが片倉のことを呼んでたような……」
そう言って、ははっとごまかすように笑う。
何でも笑って済む訳じゃないっていうのに。