雫とサクの姿を星南学園前で見た後、今に至るまで、自分がどうしていたのか、どんな経緯でここに来たのか、全くわからなかった。
たったひとつわかることといえば、つい数分前まであたしが寝ていたということだけ。
目覚めたら、見知らぬ部屋が視界いっぱいに広がって。
まるで生活感の感じられないその室内、中心に置かれているソファーには、あたしの苦手な男の姿があった。
…――どうやらここは、椎名の家らしい。
そう理解するのに、そんなに時間はかからなかった。
……なーんて、妙に冷静に分析してるあたし自身は、柔らかいベッドの上に横たわってる訳だけど。
「…―おー、起きとったんか。」
何も発することなく天井を見つめていれば、急に影が落ちた視界。いつの間にやら近づいて来ていた椎名が、あたしの顔を覗き込むように言葉を紡ぐ。
「どうぜ?気分は。」
「……最悪。っていうかそれより、あたしに何かした?」
「は?」
は?じゃないでしょうに。
何をしてくるかもわからない椎名の前で、無防備にも寝てしまったとか、本気でありえない。
一瞬訳のわからないような表情を浮かべた椎名は刹那、ようやく問いの意図を咀嚼したようで、ゆっくりと口角を上げる。