「―――い、澪ってば!」
「んぁ?」

急に意識が浮上する。
ここは、学校…?

「もう、数学の時からずっと寝てたんだよ?」
「あ、あぁ、ごめん」

いつの間にか辺りは夕暮れ。
二時間ぐらい寝ていたようだ。

眠くて閉じかける目を無理矢理開ける。
気付けば真理絵が帰りの支度をしている。
急いでいるのだろうか、動きが早い。

「急いでるなら、先に帰っていいよ?」
「あ、バレた~?」

真理絵はここぞとばかりに顔をほころばせると、いきなり猫撫で声を出してきた。

「な、何だよ!気持ち悪い声出して…」
「ひどいなぁ…私も傷つくよ?」

言葉とは裏腹に顔がニヤけてる。またか…。

「何?彼氏?」

そう聞くと、真理絵は笑顔を弾けさせた。

「そう!そうなの!彼がね、クリスマスデートしようって!!」

真理絵の顔が“乙女”になっているのを見て、澪はクスリと笑った。

「な、何?」
「いや、可愛いなと思ってさ」

澪が微笑んで言うと真理絵は顔を赤くした。

「?どうかした?」
「なんでもない!!」

そう言うと真理絵は出て行ってしまった。

(その顔でそんな事言うなんて反則よ!!)

そんな事を思いながら走り去っていった。