僕が通っていた大学は北関東にある畜産大学で、真夏は軽く35℃を超える場所だった。





助手をしているゼミの学生達と、南半球の果てに行きたい、などと他愛ない話をしているとケータイが思い出したように鳴り響いた。





リューネだった。





「ヒカル………」





学生が彼女なのかとからかってきたが、その声がいつになく弱々しかったので僕は訂正する気すら起こらなかった。





「―――大江先輩が………」





君は泣いているの? 





あの駐車場から見上げた窓で微笑む彼のために、自由になれと願った彼のために。