それはヒトがヒトであるために決して開けてはいけない最後の扉なのだ。





開けてしまえばそこには何も存在しなくなる。





自然を前に弱者が強者に淘汰されるのみ。





「リューネ?」





振り向くと車を挟んだ向こう側で彼が微笑んでいた。





「遅いよ。ヒカル」





「仕方ないさ。飼育員として最後の仕事をしてきたんだ」





その笑顔は心にべっとりとこびり付いていたわだかまりが取れたようですっきりしていた。





「辞めるんだ?」