「残念だけどこいつを連れては行けない」





「どうして!? 私は見せてあげたいのに!」





「人が集まり始めている。怪しまれるよ。火事は反対側だからまだいいけどそのうちここにも―――」





ヒカルのケータイが震えていた。





律儀にバイブにしていたことにも呆れるが電話に出ようとすることはもっと理解できなかった。





「もしもし、カズネ?」





群衆のざわめきとサイレンの音が吐息すら凍り付いてしまう空気に漏れていた。





「君はどこにいるの?」





カズネの声までは聞き取れなかったけれど、ヒカルの落ち着いた声がなぜか私の意識を鮮明にしていく。