「これ以上は待てない。後でカズネには連絡しておくよ」





そう言うと渋々リューネは屈む。




「服と下の残ったフェンスに気を付けて。それから、リューネ―――」





地面から鋭い切断面を向ける針金を見ていたリューネが顔を上げる。





僕はその日本人離れの顔に触れ、キスをした。





彼女の頬に僅かな土が付いた。





「カズネに殺される」





思っていたより自然な動作だったんだ。





「私はヒカルが思うほど軽いオンナじゃないから」





不適に微笑みを浮かべる彼女は暗闇に溶け込む新月のようだった。