繰り返される増改築工事で細胞のように刻々と増殖していく建造物の群れは、バリアフリーを考慮されていたおかげで車イスの移動も苦にならなかった。





夏休みに入っている大学には通信課程のスクーリングに来ている学生達で溢れていて、いつもとは違う空気に包まれていた。





その中を私は大江先輩の背中を押しながら23号館の精神分析センターに向かう。





彼の部屋で彼女が待っている。





そんな気がした。





絶え間なく聞こえる蝉の声と肌に焼け付く太陽の光から逃れて自動ドアからエントランスに入ると、まとわり付く熱気を洗い流すようなひんやりとした空気が私達を包んだ。





エレベーターを使い地下2階へ下りると待ち受けた関係者以外立入禁止の札を避け彼の部屋を目指す。