私達は顔を見合わせる。


「そうかそうか…きおさんも電車にのれるようになったんですか…」


「はい…まあ…」


そりゃ、この年になればのれますよ。


「久しぶりだなあ……」


「はい。しばらくお世話になります。」


おじいさんに最後にあったのはもう何年くらい前だろう。


私が小学生くらいの時じゃなかったかな。


「さぁさぁ、車におのりなさい。足元、気をつけて」


「ありがとうございます」


車が発進すると、わずかにあいた窓から涼しい風がはいってくる。


「…………」


「いいところでしょう。高校もここから通えばいいですよ」


「はぁ……」


実感というものはそんなにすぐには沸いてこないものなんだろう。


「あそこに見えるのがそうですよ。覚えてますか?」


「ああ、勿論…」


そう簡単に忘れるはずもない。