「………ユラ…」

「話しは済んだか、ユラ」

そう言って入ってきたのはヒノトだった。

ヤナを通り越して背中を向けたままのユラに触れる。

「戦場に戻れ」

「…まだ話は終わってないっ」

震える声で呟いたのは後ろにいたヤナだった。


スッと振り返るヒノトに余計身体をビクつかせる。

「もう少し時間がほしいと?」

「………」

ヘビに睨まれたカエル状態。


頷こうにも頷けなかった。

しかしヒノトはユラの手を引いて向かってきた。



ギュッと目を瞑るヤナの耳元で低い声で囁いた。

「時間は十分にやった。また今度にしてくれ」

肩を叩かれて、俯いたままのユラと擦れ違った。


一度も目が合うことなく部屋から足音が消える。

それからすぐに、ヤナは足から力が抜けるのを感じた。


トスンッと床のカーペットに座り込む。