「…早く帰ろう」

同じことを呟いて僕は人混みの中を恐縮しながら急いだ。



その時、ヤナの隣にフードを被る2人の旅人がすれ違った。

スッと顔を上げて目を光らせる。


左頬の痣が怪しく波打っていた。

「…気付いた?」

「気付いた。お姉ちゃんのにおいだ」

ハイマも答え、同時に振り返った。


ヤナの背中を目に焼き付けた。

においと共に。



ざわめきが増す中、その立ち止まる2人の姿だけが沈黙を保っていた。







買ってきたお弁当を美味しそうに食べるユラを見ていて、ヤナは眉をひそめていた。


思い立ってヤナは口を開く。

「ここに住むの?」

「いけないですか?」

悪びれることもなくヤナの質問に笑顔で質問返ししてきた。