隣にいるカップルの会話だった。

何気なくそれを耳に流す。

「アンマズラ軍のスパイさ。何かあったんじゃないのか?それか爆弾しかけてるとか」

「何それ。アンマズラは魔術でしょ?そんな原始的なのは使わないわよ」

早く帰ろう、と言って彼女の背中を押して先へ行ってしまった。


そういえば周りに国軍の奴らがいることも分かる。

それを見て、ここも戦争に巻き込まれると荷物を持った人もいる。

(スパイ……ここも戦争か)

そう心で呟くヤナの頭の中は、どうその戦争を避けるかでいっぱいだった。



父さんは何千人もの魔術師を先頭きってなぎ倒した。


(だけど僕にはそんな力もなければ能もない)

だから今のヤナには逃げることしかできなかった。

例えそれが親に対しての汚れに繋がるとしても、生きていれば関係ないと思っていた。

(そうだ…生きていれば……)