辺りは、本当にオレンジ一色で、雪乃のバックを覆う。

それが凄く綺麗で、思わず見とれてしまう。

「?…どうしたの?」
「あ…いや…」


髪を耳にかける癖とか、指使いとか、可愛い上目遣いとか…

全てが姫で…

それでも、俺に見せる表情は何だか他人で、寂しい…

まぁ、向こうは覚えてないんだから仕方ないんだけれど。



「ない…」

辺りは、オレンジから黒にかかろうとしていた。

「諦めて、また明日探せば?暗くなったら危ないし…」
「嫌!」


急に雪乃が大きな声を上げるので、ビックリした。


「ごめん…大切な物なの…凄く…」
「…」


なんだよ…そんなに大切なもんなのかよ…


「なんで?」
「なんでって…それは…」

暗くなってきても分かる。

雪乃は今、顔を赤くしている。

そっか…

「彼氏からのプレゼント…とか?」

雪乃は少し顔をうつむかせてから、可愛くコクリと頷いた。


そっか…

そうだよなー…


「そっか…じゃ、探すか」
「え?いいよ、悪いし…帰ってくれても…」
「いや、暇だし」

なんだよ…暇って…

ほんとは、少しでも雪乃といたいからだよ…

「ありがと」

なんて、また他人みたいに笑う。

それが何だか腹がたつ。

そりゃ覚えてないっていうか、雪乃は姫とは別人な訳だし、今は俺のただのクラスメート。

それに、彼氏なんて今時居て当たり前。


なのにどんどん不満が溜まる。


俺の姫だったのに…

俺だけの、姫だったのに…