ずっと、思ってることが言えなくて言いたいことが言えなくて嫌だった。
 小さい頃からこういう性格。
 だから、村田君みたいな性格は凄く羨ましいと思った。
 そのせいか、今まで告白もしたことが無い。
 それ以前に、好きな人さえも作ったことが無い。
 高校生にもなって初恋もまだ。
 なんてこと言ったら笑われるに決まってる。
 だから誰にも言ったことがない…言えない。
 そんなことを一時考えてた。


 「起立。礼。」
 
 ??え??もう帰れるの??
 なんで??
 
 「今日は入学式だけなんだな。」

 となりで嬉しそうに言ってる村田君の独り言に耳を傾けて
 あたしは一人で納得していた。


 村田君の予想的中!!

 その日は入学式だったから、一時間で帰れた。
 帰り道ずっと、村田君の名前を頑張って覚えながら帰った。
 
 


 「ただいま。」
 
 帰ってくるの早すぎたかな…??

 あたしのお母さんは思いっきり暇人。
 まあ良く言えば専業主婦…かな??
 だから家にいないときといえば買い物かママ会。
 でもどこかヌケてて結婚式とかは行くのに
 入学式とか卒業式には出席しない。
 お母さんが言うにはすぐに足が痺れるらしい…笑
 
 「え??早かったね。」
 「うん、まあね。ねえお母さん今日の夕ご飯何??」
 「何食べたい??」
 「んー。何でもいいや。でも先にお風呂入ってくる。」
 「はーい。」


 お風呂の中であたしは、担任の先生の顔と名前。それから、クラスの子達の顔を一生懸命思い出していた。


 「ご飯できたよ。」
 「いただきます。」
 
 「ねえ美魅、新しい友達できた??」
 「あー。まあ…うん。」
 「良かったじゃん。今度でいいから紹介してよね。」
 「…でも男の子だよ??」
 「え??珍しいわね。」
 「そっかなあ??」



 あたしの新しい学校での目標は忘れられない三年間にすること。
 本当は、できればだけど…好きな人も作ってみたい。



 
 今日が、忘れられない日になった事に気づくのはもう少し後の話。