「今世界のトップに入っている神門グループの婚約者が記憶喪失になったと世間に広まったら…マスコミは間違いなく厄介な方へと持ち込んでしまう…亜蓮、3年に誰か絆奈を任せられる方は?」
俺以外いねぇだろ…
「多分あなたは今あなた以外にはいないと思っているかもしれませんけど…」
読まれてる…!
「この合併の件は世間を揺るがせることなのです。真剣に考えてほしいのです。」
世の中金だからなぁ…
俺がもし当主になったら…
けれど頼む奴がいねぇ…
女だったら何するか分かんねぇし…
男は…
五十嵐くらいじゃねぇかな…
けどあいつ絆奈とキスしやがったし…
「…伯母様、一人います。」
=五十嵐希夢=
「なぁ、お前のちゅーした子、記憶喪失だってよ。」
今朝桜小路さんが登校したというのは聞いた。
けれど…記憶喪失って…
「あー、それ俺も聞いたー。」
「あたしもー。」
「神門君がずっと隣だったてぇ。」
「五十嵐君とキスしたくせにねぇ~。」
いつも思うけれど…
女子って本当怖いな。
「べ、別に俺どうも思ってないし…」
本当はちょっとドッキリしたけれど…
「五十嵐君は優しいんだねー。」
「別に…」
「さすが雪薔薇王子だねー。」
確か須藤聖奈(すどうみな)だっけ…
今年初めて同じクラスになった俺に付きまとうしつこいクラスメイト。
女子と話す時の声と男子と話す時の声は真逆。
うるさいなぁ…
だいたい誰だよ…
雪薔薇王子とか言い出した奴…
「雪薔薇王子って素敵な名前だと思うんだけどなぁー。」
そうですか…
「おい五十嵐ー。」
「なんだ凜。」
「校長がお前を呼んでるぞー。」
「えぇ!?」
「五十嵐、お前また無断チャリ通したのかー?」
「ちげぇよ!もうやってねぇし!」
2年の頃、歩くのが怠くて、通学路の途中にある友達の家までチャリで行ってそこから歩いていた。
けれど、なぜか話したことのない3年男子にチクられてめっちゃ怒られた。
後から聞いた話だと、そいつが告った2年女子は俺のことが好きだから断ったらしい。
つまり逆恨みだな。
まぁそれは置いといて。
「俺何もしてねぇし!」
「まぁとにかく行って来いよ。」
「大丈夫だよ五十嵐くーん♪」
この声無理…
「ったくよぉ…」
しぶしぶ教室から出た。
「あの…!」
「んぁ?」
なんという間抜けな声を出してしまったんだろう。
だってそこに立っていたのは…
「君…桜小路さん…」
「あ、あの…この学年に五十嵐って人いますか…?」
「あー、それ俺ね。」
「えっ、そうなんですか!?良かった、早く見つけられて…あの、校長先生が五十嵐さんを迎えに行くよう頼まれて…それで…」
「校長が桜小路さんに…?」