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「あれ、もうこんな時間だ」
藤臣が携帯の画面を見て言う。
私も腕時計を見ると、集合時間の30分前だった。
………私、何やってんのよ。
こんな長時間こいつといるなんて…
「山本さんといると時間が早く感じる」
『…そのセリフ、5回は聞いたわ』
「ゲームで？」
『二次元以外で聞くと鳥肌ものね』
「あはは、じゃあもう言わないよ」
…つかめない。
おふざけなのか、真剣なのか。
っていうか、そんなゲームとかいう単語を軽々しく出すな。
誰かに聞かれたらどうすんのよ。
『あんまりおおっぴらに言わないでくれる？』
「ごめんごめん。……ただ、」
『…？』
「こういうスリルって、ちょっと楽しいよね」
何なの、その笑顔は。
藤臣の新たな一面が垣間見えた気がした。
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藤臣と集合場所に向かってる途中、売店があった。
水族館オリジナルの雑貨が並べられていて、思わず足を止めた。
私の目を引いたのはショーケースに入っていたスノードーム。水の中の小さな世界に造り物の魚が浮いている。
…実咲が好きそう。
買って帰ればきっと喜ぶ。
「山本さん？」
「……今行くわ」
しばらく考えたが、やめた。
そんな安い物ではなかったし、こんなもの買っているところを見られたら藤臣に
「はは、こういうのが好きなんだ。意外」
なんて馬鹿にされるに違いない。
ごめん実咲。今度お菓子買ってあげるから。
私は心の中で実咲に謝って、売店を後にした。
